「何らかの原因で奥歯が抜けたけれど放置している」
「たかが奥歯の1本、他にも歯はあるから気にしない」
「治療した方がいいのは分かっているけれど、歯科医院へ行くのを躊躇してしまう」
意外にも、こうしたお考えやお悩みをお持ちの方は少なくありません。さまざまな理由から歯科医院に行けないまま、手がつけられないところまでお口の状態を悪くしてしまった、という方も中にはいらっしゃいます。
結論から言うと、たった1本だけでも、奥歯がないことによりお口の健康被害を招くことが分かっています。奥歯が抜けたまま放置してしまうのは様々なリスクがあり、放置期間が長ければ長いほど、お口の健康被害にとどまらず、身体にも不調を及ぼす可能性だってあるのです。
本記事では、奥歯がない人が抱えるリスクや治療法を徹底解説していきます。奥歯がない、抜けたままの奥歯を放置することでどのような影響やリスクがあるのか、また、具体的な治療法や歯科医院での相談・診療の流れを知ることで、あなたのお悩み解決のきっかけづくりにしてもらえると嬉しいです。
歯には、「咀嚼(噛む)」をはじめ、「発音」や「お顔(表情)の維持」といった重要な機能があります。その中でも特に奥歯は、「咀嚼(噛む)」により、食物を細かく噛み砕いたり、すり潰したりして、消化・吸収をしやすくする役割を担っています。また、お口全体の「噛み合わせ」の基盤となるのも奥歯です。
そのため、奥歯が1本でもなくなると、なくなった歯のスペースを埋めようと歯が動き始めます。そうするとお口全体のバランスが崩れていき、前歯や健康な歯にまで悪影響を及ぼしかねません。
つまり、なくなった奥歯を放置してしまうと、「噛む力の低下」や「お口全体のバランスが悪くなり、歯周病や虫歯になりやすくなる」などの変化が起こり、単に噛める、噛めないといった歯の機能面以外にも、様々な問題が起きてしまうのです。
ここからは、奥歯がないまま放置した場合に、どんな影響やリスクがあるのかを具体的に解説していきます。
まずは、最も想像しやすい「機能面」における影響やリスクを説明します。
奥歯がないまま放置してしまうと、噛み合わせが悪くなることがあります。
そもそも歯は、上の歯と下の歯が噛み合っているのが基本ですが、もし下の奥歯が抜けた状態が続くと、噛み合っていた上の奥歯が、空いたスペースに挺出することがあります。簡単に言えば、「上の奥歯が伸びてくる」というわけです。
また、抜けた歯の周りの歯にも影響があります。例えば、もともとあった歯の空いたスペースを埋めようとして、隣の歯が傾いて倒れてきたり、他の歯が寄ってきたりして、歯並びにも変化が起こります。
このように、奥歯が抜けることで、本来噛み合っていた歯が挺出したり、他の歯が傾いてきたりして、お口全体の噛み合わせ・歯並びが悪くなることがあるのです。歯並びが悪いと、見た目だけでなく、虫歯や歯周病のリスクも高まるため注意が必要です。
また、噛み合わせは単に「食べる」ときだけの問題ではありません。重い物を持ち上げるとき、スポーツをするときなどに、しっかりと奥歯を噛み合わせられなければ思うように力が入りません。
つまり、奥歯がないまま放置し、それによって噛み合わせが悪くなると、日常生活にも悪影響を及ぼしてしまうのです。
歯が抜けると、歯を支えていた歯槽骨が機能を失い、骨量が少なくなってしまいます。それにより、歯茎が下がったように見えてしまいます。
また、歯槽骨が少ない状態では、インプラント治療をしようとしてもすぐにインプラントを埋めることができない場合もあります。つまり、歯がない状態で放置していくことは、その後の治療の選択肢を狭めたり、治療をするにも長い時間を要したり、費用が高額になったりと様々な障害が生まれます。
奥歯がないことで、空いたスペースに食べ物が詰まりやすくなります。また、歯全体の噛み合わせが悪くなると、食べ物をよく噛めない、すり潰せないようになり、口腔内に食べ残しが溜まりやすくなります。その結果、口臭が発生しやすくなるのです。
次は、発音や審美性における影響をみていきます。
奥歯がないと、発音が難しくなることがあります。隙間から空気が漏れるため、特に、「し」「ち」などの音がきちんと発音できないことがあります。そのため、ときにコミュニケーションに悩まされることもあるでしょう。もごもごとこもった話し方になることもあります。
奥歯は他人から見えにくい場所にあるとはいえ、口を大きく開けて笑ったり、食事をしたりする際には、意外と見えるものです。歯がない、というのはマイナスな印象としても残りやすいものです。
こうして審美性が劣るだけではなく、奥歯が見えることを気にして、コミュニケーションを控えたり、必要以上に人の目を気にするようになったりと、精神面にも影響を及ぼしかねません。
奥歯がないと、顔の形(輪郭)が変わることがよくあります。というのも、歯を失った部分の骨は、噛む刺激を受けないことで機能が衰え、徐々に痩せていってしまうからです。
つまり、奥歯がない状態を放置すると、時間をかけて頬のラインが内側に寄ってきて輪郭が細くなっていくのです。輪郭が細くなるというと、「小顔になれる」とイメージしがちですが、この場合、「頬がこける」「しわができやすい」などマイナスな印象の方が強く表れます。
また、片方の奥歯がなくなることによって、もう一方の奥歯で噛むという「噛み癖」がついてしまいます。よく噛む方は筋肉がついて引き締まっていても、奥歯が抜けて噛まない方は頬がたるんでしまうことも…。こうして、左右の顔が違って見える、顔全体が歪んで見えるというように、お顔の形も印象も変わってしまうのです。
奥歯がないことは「歯」や「口内」への影響だけでなく、身体にまで影響を及ぼします。具体的には以下のような影響が出やすいと言われています。
食べ物を「咀嚼(噛む)」する上で最も重要な奥歯。通常、奥歯で食べ物を噛み砕いて、さらに細かくすり潰して飲み込みますが、その働きを持つ奥歯がないと、咀嚼が不十分になります。
その結果、消化器官に負担がかかり、胃腸の不調などをはじめとした体調不良を引き起こしやすくなるのです。
特に左右どちらか片方の奥歯がない場合、噛み癖がつくことで、左右の負担の度合いも異なります。また、こうして左右の噛み合わせのバランスが崩れていくと、それがのちのち、身体全体のバランスにも影響していきます。
その結果、肩こりや頭痛、腰痛に悩まされたり、ひどい場合は、めまいや吐き気に襲われたりすることもあるようです。
まさかたった1本の奥歯がないことで、他の歯や身体全体にまで影響を及ぼすことまで想像できていた方は少ないはずです。だからこそ、奥歯を失っても「大丈夫だろう」と楽観的な考えで放置する方が多いのが現状としてあるのでしょう。
残念ながら、奥歯がないことを放置したまま、口内の健康状態を保てている方はほとんどいません。今は大丈夫でも、目に見えないところで時間をかけて様々なリスクが高まっています。
まずは奥歯がないまま放置することによる影響やリスクを知り、「そのままにしない意識」を持つこと・歯科医院に相談・治療するといった「行動力」が大切です。
ここまで説明してきた通り、奥歯は「食べ物を噛む」ことに加えて様々な役割を持つ大事な歯です。そんな奥歯を失ってしまった場合、どのような治療法があるのでしょうか。
ここからは3つの治療法について解説していきます。
インプラントは、顎の骨にチタンでできたインプラント体という人工歯根を埋め込み、それを土台にして人工歯を取り付ける治療法です。失った歯の位置や本数に関わらず、適用できる方法です。
また、インプラントは顎の骨にしっかりと固定されるため、天然歯に近い違和感のない噛み心地が特徴です。他の歯を削る必要もないため、残った健康な歯をそのまま維持することができるというのは大きなメリットと言えるでしょう。
ただ、あごの骨量が少ない方はインプラント体を埋め込むことができないため、まずは「骨造成」という、骨を人工的に厚くする治療をおこなわなければなりません。また、重篤な全身疾患のある方はインプラントの手術ができないため、他の治療を選択しなければならない場合もあります。
◎メリット
・長期的な安定性がある
・天然歯に近く違和感なく噛める
・審美性に優れている
・他の健康な歯や骨に悪影響を及ぼさない
・入れ歯のように取り外す必要がなくメンテナンスも楽
✕デメリット
・保険適用外のため自己負担の治療費が高額になる
・外科手術が必要
・入れ歯やブリッジに比べて治療期間が長い
・インプラントが(すぐに)できない場合がある(あごの骨量がない方や全身疾患のある方など)
入れ歯は、残っている歯にバネをかけて、欠損した部分を人工の歯で補う治療法です。
どの位置の歯がなくなっても対応できるうえ、取り外して磨くことができるため、メンテナンスも簡単な治療法です。また、材質によっては保険適用になるため費用負担が軽いというのもメリットのひとつと言えるでしょう。
一方、バネで歯を締め付けるため、少なからず違和感があり、しっかりと噛むことができなくなります。そのほか、他の2つの治療法に比べると、ずれる、外れる、痛みが出る、見た目が劣る、などといったマイナス面もよく耳にします。
加えて、長年入れ歯を使用し続けると、顎の骨に噛む刺激が与えられないことで骨が痩せてしまい、口の周りが老けた印象になってしまうこともあるようです。
◎メリット
・取り外せるためメンテナンスが簡単
・インプラントやブリッジに比べて費用が安い(材質によって保険適用)
・健康な他の歯を削らなくてよい
・外科手術を受けずに済む
✕デメリット
・違和感があり、慣れるまでに時間がかかる
・硬いものを噛みにくい
・ずれたり外れたり、痛みが出ることもある
・保険適用のものは見た目が良くない
・バネ(金具)が他の歯への負担になる
ブリッジは、両隣の歯を支えに欠損部分に人工歯をかける治療法です。失った歯の両隣にある歯を大きく削り、それを土台にして人工の歯を橋のように架けるのです。
硬いものを噛んでも安定性があり、噛むときには両隣の歯がしっかりと噛む力を受け止めるので、自然な噛み心地になります。
しかし、両隣の健康な歯を削る必要があるというのが大きなデメリットです。健康な歯を大きく削って土台とするため、細菌に侵されやすいうえ、被せた人工歯と土台の歯との間にあるちょっとした隙間から細菌が入って虫歯や歯周病になる可能性が高まります。
特に奥歯は、歯ブラシで磨きにくく、不衛生になりやすい部分なので、徐々に状態が悪化し、将来的に抜歯に至るケースが多くなります。また、一番奥の歯が失われた場合は、基本的にブリッジを行うことができません。
◎メリット
・外科手術を受けなくて済む
・治療期間が短い
・材質を選べば保険適用になり、インプラントよりも低価格で歯を固定できる
・自費治療で天然歯と遜色ない自然な仕上がりを実現
・入れ歯に比べて自然な見た目
✕デメリット
・両隣の健康な歯を大きく削らなければならない
・土台の歯に負担がかかり、歯が割れやすい
・細菌が侵入しやすく虫歯や歯周病のリスクがある
奥歯がない場合に対応できる3つの治療法のうち、最もおすすめなのは「インプラント」治療です。
というのも、「入れ歯」は固定力が低いために、噛む力を本来の歯のように回復させるのは難しく、「ブリッジ」は土台となる両隣の健康な歯へのダメージが大きいからです。
奥歯が持つ重要な機能である噛む力や、残っている健康な歯を傷つけず維持する、というどちらも叶えるインプラントが最適だと言えます。
とはいえ、口腔内の状態や健康状態、予算などによっても選択できる治療法は異なります。歯科医院と相談の上で適切な選択肢を選ぶことが何より大切です。
歯科医院における相談と診療の流れをおおまかにまとめてみました。以下は、インプラント治療を選択した場合を例に挙げています。
・予約
・問診票の記入
・問診(現在の症状や悩みの相談)
・検査(視診、レントゲン撮影、CT撮影、口腔外の検査など)
・治療計画を立てる
・治療を進めるかどうかの意思確認
・術前治療(歯周病や虫歯への必要な治療)
・インプラント埋入手術(1次手術)
・抜歯や仮歯調整、治癒期間
・アバットメント(歯茎の中に埋め込むインプラント体の上部につける部品)の取りつけ(2次手術)
・型取り
・試適
・最終上部構造(人工の歯)セット
・定期的なメンテナンス
治療プランが決まったら、いよいよ治療期間がスタートします。治療期間は、症状や治療法によって異なりますが、無理のないスケジュールで進めることが重要です。
もちろん、治療が終わった後のアフターケアも非常に大切。歯科医院での定期検診や歯周病予防、自宅でのセルフケアなど、患者自身が予防に取り組むことで、治療効果を持続させ、再発を防ぐことができます。
もし問題が見つかった場合は、早期に対処することができるため、アフターケアの重要性は極めて高いと言えるでしょう。
奥歯がない場合、食事がしにくくなるだけでなく、歯周病や噛み合わせの問題も引き起こされます。そのため、奥歯がない人は特に歯周病予防やセルフケアに気を付ける必要があります。
まずは、歯科医院での定期検診を欠かさず受け、歯周病の早期発見・治療に努めましょう。また、自宅でのセルフケアとしては、効果的な歯磨き法やフロスを使ったケアがおすすめです。食生活にも注意が必要で、硬い食べ物は極力避けながら、栄養バランスの良い食事を心がけることで、口腔内の健康を維持できます。
歯科医院での定期検診は、歯の健康状態をチェックします。具体的には、歯周ポケットの深さや歯石の有無、歯の動きや磨耗の状況などが検査項目です。そのため、歯周病や虫歯の早期発見・治療に非常に役立ちます。
また、歯周病予防のために、歯科医師や歯科衛生士から歯磨きのアドバイスや、スケーリング・ポリッシングなどのケアを受けることができます。歯が痛いといった症状がなくとも、定期検診を受けることで、歯周病や虫歯の悪化を防ぎ、歯を長持ちさせることができるのです。
食生活と歯の健康は密接に関係しています。例えば、砂糖がたくさん入った食べ物や酸性の度合いが強い食べ物・飲み物は、虫歯や歯周病を引き起こしたり、歯を溶かしたりするリスクが高くなります。そのため、口にするものに気を付け、バランスの良い食事を心がけることが大切です。
また、効果的な歯磨き方法によって、歯垢や歯石の除去を徹底的に行いましょう。歯ブラシは適切な大きさ・硬さを選び、ブラッシングの際は適切な角度や力加減で歯面を磨くことが重要です。
加えて、歯間ブラシやフロスを使用して、歯と歯の間や歯肉との隙間も丁寧にケアすることで、口腔内の健康を保つことができます。
本記事では、奥歯がないまま放置することによる影響やリスク、また奥歯がないときの治療法についてご紹介してきました。
奥歯がない場合は、本来持つ噛む力が発揮できないだけでなく、お口全体や身体への様々な悪影響が連鎖して起こりやすくなります。放置する時間が長ければ長いほど、お口全体の健康状態の悪化を招くため、できる限り早いタイミングで適切な治療を受けることが大切です。
歯の状態を知り、自分に合った治療を受けるためにも、また、これから先も不安なく過ごせる健康なお口を維持するためにも、まずは高田歯科クリニック(東京都杉並区)へお気軽にご相談ください。
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